【第36号】4. 運賃規則の雑学知識(その1)

 編集長の関本です。

 OFCが以前『航空トラベル検定』という検定を実施していたのをご記憶の方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。タリフ書籍の裏表紙によく広告を載せていたので、「そう言えば、そんなものあったな」と思い出される方も少しはいるかもしれません。

 前年ながら、コロナ禍での旅行業界の難しい状況から、検定を受けていただく方も減り、いずれ再起することを目指して一旦お休みに入りました。

 

 実は、休止する前に、この検定には体系的に勉強するための参考書がないというご意見を頂き、公式テキストの作成に取りかかっていました。

 編集がかなり進み、なんなら印刷する手前まで行っていた感じのところで、発行ストップがかかり、お蔵入りに。けっこう頑張って文章を書き、編集しましたので、どうにかデビューさせたいと思い、今回、テキストの中から運賃規則に関係ありそうなものをいくつか、コラムとして再編集することにしました。

 

 これから何回かに渡り、ちょっとした雑学として掲載していきますので、何かの参考になればと思っています。

 

 

  

一般的な都市の3レターの法則

 旅行会社に入って一番最初にやるのは、IATAコードを覚えること、という業界の方、多いんじゃないでしょうか。ぼくも遠い昔、「主な空港くらいは覚えとけよ」と言われて、一生懸命暗記した記憶があります。

 

 あんまり複雑にするとみんなわからなくなってしまいますから、なるべく想像しやすいもの、というのが基本。

 たとえば、イギリスのロンドンはLON。「LONDON」の最初の3文字を取ってくる。これはわかりやすい。パリも同様ですね。「PARIS」からPARになります。

 

 ほかによくあるパターンは、アルファベットの綴りから子音だけを抜き出して並べるもの。バルセロナはBCN、バンコクはBKK。ぱっとコードが目についたとき、頭の中で繰り返していれば、どの都市のものか思い当たりそうな感じがします。ヨハネスブルクはJNB、というところまで来ると、ちょっと長くて大変ですけど。

 

 

 

都市名と全然違う3レター

 ただ、歴史的な事情で、我々が呼んでいる都市名と全然違う3レターを割り当てられているケースもあります。

 まずは「LED」と書いてあったら、どこでしょう? 答えはロシアのサンクト・ペテルブルク。一般的な法則で言ったら「SPT」とかになりそうなもの(SPTはマレーシアに存在します)。なんでLEDなのかと言うと、話はソ連時代に遡ります。当時、この街は指導者レーニンを記念して、レニングラードと呼ばれていました。ここから3レターが決まり、ソ連崩壊後、名前が元に戻っても、コードはわざわざ変える必要なし、ということになっています。

 レニングラードになる前のサンクト・ペテルブルクについては、プーシキンの『青銅の騎士』を読むと、ちょっと雰囲気が掴めるかもしれません。ちなみにぼくは3回くらい仕事で行きました。レーニン像はどこにもありませんでした。

 余談ですが、都市としてのサンクト・ペテルブルクが属する州は「レニングラード州」で、ここはソ連からロシアに移っても変わらないのでした。

 

 

 身近なところではアジアにもあります。

 ミャンマーの首都ヤンゴンのコードは「RGN」。初めて見たとき「ヤンゴンって、こんな変な綴りなの?」と思いました。が、このコードは旧国名ビルマの首都ラングーンに由来します。

『ビルマの竪琴』って、今の若い人は読まないんでしょうか。よく考えたら、ぼくもちゃんと読んだことないかもしれません。あの「ビルマ」です。

 

 それから、ベトナム最大の都市ホーチミン・シティは「SGN」。これは思い当たる方けっこういるんじゃないでしょうか。サイゴンですね。

『ミス・サイゴン』というミュージカルがありますが、まさにその世界で、南北で戦争をしていたときまではサイゴン。統一されて、建国の英雄ホーチミンを記念し、ホーチミン・シティに名前が変わったものの、都市コードは変わらず。と言うより、今もいろんなところに普通に「SAIGON」って書いてあります。ベトナム人の中でも、サイゴンはサイゴンみたいです。

 

 

 

うっかり間違えそうな都市

 いろんな事情で現在の都市名と一致しない例はあるにせよ、比較的わかりやすくつけられる3レターコード。中には、ちょっと変な、と言うか間違えやすいものもあります。

 

 ドイツ南部の大都市ミュンヘン。このコードは「MUN」か「MCN」あたりなら法則に一致。ところが正解は「MUC」なんです。ややこしいですねぇ。

 

 また、中国語圏は日本での発音と全く違うアルファベットの綴りで、コードもそれに拠っているため、日本人には想像がつかないものが数多くあります。

 重慶は英語読みでは「CHONGQING」となり、3レターは「CKG」。「はて、Kはどこから出てきた?」と心の中で突っ込みつつ、こりゃわからんな、となります。

 また、厦門(アモイ)は「XIAMEN」なので「XMN」。このようにXから始まる都市が出てくるのが、中国語圏の特徴です。

 

 

 旅行業界で働いていても、決まった先への業務渡航手配ばかりしていると、意外にいつも同じコードしか目にしない、ということもあるかもしれません。

 あるいは、秘境の旅を多く手掛ける旅行会社にいたら、普通に生きていたらお目にかかれない珍しいコードに接することも多いかも。

 奥の深い3レターの世界、特に新入社員や若い方は、面倒だと思わず、ぜひ勉強してみてください。

 

 次回は同じ3レターでも、都市コードと空港コードの関係について、少し話してみたいと思います。

 それではまた。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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