【第37号】4. 日本発着国際線のトレンドと運賃

 編集長の関本です。

 前回、この先の航空業界がどうなるのかというような予測を少しお話しましたが、日本の航空会社、国際線はそれなりに搭乗客がいるようです。ただ、日本発着ではなく乗り継ぎ需要が多く、どうも客単価が上がらず、経営的には厳しそう。

 早く日本発の旅行者が増えることを願うばかりです。

 

 そんな中、既に日常を取り戻している各国では、今度は空港職員や関連業の人手が足りず、旅に支障が出ている模様。特にロンドンは1日の旅客数を制限するとか、ドイツあたりでもかなり混乱が生じているようで、一気に戻ったのがいいのか悪いのか、ということかもしれません。

 

 

 さて、そのヨーロッパ。ロシア-ウクライナ関係の緊張もあり、気軽に旅に出にくい雰囲気もある地域ですが、そのフライトについて不思議に思っていることがあり、今日はそんなお話です。

 

 

 

ヨーロッパに向かう経路

 このニュースレターの運賃規則を解説するコーナーなどでも、何度か「グローバルインディケーター」について触れています。

 ある地域から別の地域まで飛行するのに、距離があれば当然、途中で取り得るルートは複数出てくるので、その長さに応じて運賃を設定しましょう、というのが基本的な考え。ヨーロッパに行く場合は、こんな感じのパターンがあります。

 

① TS / Trans Siberia

・日本または韓国からヨーロッパ(ロシアを除く)への直行

・日本または韓国からシベリア経由でヨーロッパへ

 

② EH / Eastern Hemisphere

・いわゆる南回り

 

③ AP / Atlantic Pacific

・大西洋と太平洋を通る(アメリカ乗り継ぎ)

 

 詳しくは、こちらの記事も併せてご覧ください。

 

 

 さて、恐らく一番利用客が多いであろう①の直行ルート(シベリアは上空を通過するものであって、乗り継ぐ場所ではないという前提で考えます)。

 世界地図を開いて、そのルートはどうなっているか考えると、平面図ではよくわかりませんね。これ、地球儀に糸を当てて、東京とロンドンの間を結んでみると、わかりやすいです。まさに広いロシアの上空を飛ぶ必要がありますね。

 厳密には、飛行経路を管理する管制の関係上、真っすぐ飛べるわけではありませんが、概ねこれが最短ルートであり、航空会社にとっても、このところ高騰して大変な燃料の消費量を抑えられる方法だ、ということをご理解ください(ただし、ロシア上空を回避することで、通行料の支払いがなくなり、そこがまた収支面では難しいところ)。

 

 

 

ロシアを通過できないとどうなるか

 しかし、今の世の中でロシア上空を飛んでヨーロッパまで一直線というのは難しい。北か南か、どちらかを迂回しなければなりません。

 ここで興味深いのは、日本航空と全日本空輸で判断が分かれたこと。

 ウクライナ問題が発生し、ロシア上空を通過できなくなった当初、日本航空は北回りを、全日本空輸は南回りを選択しました。

 

 それぞれ一長一短あり、日本発の往路は北回りの方が所要時間が短く、逆に現地発の復路は南回りの方が速い。経路上空の風の向きと強さが関係しています。

 一口にヨーロッパと言っても、最もロシアに近い手前のヘルシンキと、日本から一番遠いロンドンでもまた話が変わりますが、ざっくりそんな傾向がある、ということです。

 行きが楽な日本航空対帰りが楽な全日本空輸。うーん、悩みますね。実際には、気軽に旅行できない状況でしたから、机上の話ですが。

 

 しばらくすると、当然のことながら、一番いい方法を探すもので、往路は北回り、復路は南回りという世界一周航路が定着しました。最初からこの手が使えなかったのは、緊急時に寄港する空港をどこにするのかなど、普段飛んでいない地域を通過するためにいろいろ準備が必要だからです。

 これで飛行時間が短くなり、搭載しなければいけない燃油が減ると、人や貨物を多く積めるようになり、航空会社の経営も助かりますし、利用者としてもメリットが生まれます。早く平和な世の中になってロシア上空を飛べるようになるのが一番ですが、現状でいろいろ工夫しているんだよ、というお話でした。

 

 

 

ところでグローバルインディケーター

 ここで終わると、普通の新聞の記事と大して変わらない内容です。

 

 このコーナーは運賃のトレンドの話ですから、各社の運賃を見ていて思ったんです、「これ、実質的にグローバルインディケーター変わらない?」って。

 本来、TSというグローバルインディケーターは、最短距離を取るから直行便に割り当てられているのであって、シベリア上空を通過しないのであれば、TSと呼ぶのは変です。

 

 南回りだと、たとえばバンコクやドバイで乗り継ぐのと同じような経路で、EHのルートを取ります。

 また、北回りになると、懐かしのアンカレッジ経由POの復活です。

 

PO : Fare components/sectors between Area 2 and Area 3 on polar flights from/to Europe-Japan/Korea via Area 1 on any routing which does not touch a point in North America south of 60 degrees North Latitude

 

 現在では存在しないグローバルインディケーターですが、シベリア上空を避けて北側を通るには、これしかないはず。

 

 社内で航空会社の申請を担当している者に聞いてみました。

「これって、グローバルインディケーターどうなるの?」と尋ねたところ、「みんなTSのままだし、航空会社も気にしてないみたいです」というお返事。そりゃそうですよね。一時的な話で、わざわざ書き換える理由もないし、直行便だから、そのルート上で乗り継ぎが発生するということもないし。

 

 ちょっと残念ですが、珍しい(IATAが規則を定めたときには想定していなかった)ルートの取り方なんだなぁ、と。

 飛行時間が長くなることで、機材や乗員のやり繰りがつきにくくなり、スケジュール上も乗り継ぎがうまく繋がらないというケースが発生しているようです。ヨーロッパ方面は今後もこういった難しい事情により、様々な変動が頻発することが予想されますので、ご利用の皆様は、十分お気を付けください。

 

 

 昨夜、家でフランスワインを飲んでいたら、唐突にパリに行きたくなりました。海外に気軽に行ける時代が戻ってくることを願って、引き続き皆様に運賃の情報をご提供してまいります。よろしくお願いします。

 

 それではまた。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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