【第46号】3. 2023年の日本発着国際線動向を読む

 以前、『日本発運賃の歴史と変遷』という連載で、国土交通省の統計資料を引用し、コロナ後の国際線回復について分析したことがありました。

 

https://www.ofc.co.jp/news/newsletter/backnumber/221122-history/

 

 あれから数か月経ち、2023年夏スケジュールの概要が発表されましたので、取り上げてみます。

 

 なお、国際航空の世界では1年を夏と冬のふたつに分けていて、今回は3月最終日曜から10月最終土曜までの期間について、ということになります。

 

 

 

日本発着便はどのくらい回復したか

 この回で参照する資料は、以下の国土交通省ウェブサイトからご覧いただけます。

 

 

 少し下がったところにある「各期の国際定期航空便の主な動向」から「■2023年夏期スケジュール」のURLを開くと、PDFで資料を見ることができます。

 

 全体の概要は1ページ目にまとまっていまして、コロナ禍前の7割程度まで国際線は回復しているのだそうです。

 特にしばらくなかった新規航空会社の就航が再開したのはいいことで、1月のグレーターベイ航空(香港)と、3月のエルアル・イスラエル航空は、ともにOFCが就航のお手伝いをしました。

 

 

 

地域により異なる回復状況

 さて、2ページ目には方面別の状況がまとめられています。やはり19年冬スケジュールとの比較で見てみましょう。

 

 アメリカ方面は85.5%まで回復。業務渡航でアメリカに行く方は多いでしょうし、観光旅行でもハワイは早い段階から各社再開。特に厳しい制限のないアメリカ方面は、比較的遊びに行きやすかった事情もあるのかな、と思います(ただし、5ページ目を見るとわかりますが、アメリカ本土便は19年を超えている一方、日本人観光客中心のハワイ・グアム等はまだまだこれからです)。

 

 意外と遅れているのはヨーロッパ。中東やアフリカを含む値ですが、まだ53.9%までしか戻ってきていません。ただ、これはコロナ関連だけではないでしょう。

 ウクライナ情勢の悪化から、ロシア行きの便はかなり縮小されましたし、ヨーロッパ直行便はシベリア上空を飛べず大回りする関係で所要時間が大幅増にもなり、気軽に行く雰囲気ではありません。業務渡航を中心にした最低限の需要しかないと考えれば、半分まで戻ってきたのは、まだ大きい値だと言えるかもしれません。

 

 アジア方面については、国ごとの事情を分析する必要があるため、後ほど。

 

 

 

国内の受け入れはまだこれから

 3ページ目は国内の空港別就航状況です。

 2019年冬と比べて、成田は63.4%、羽田は97.7%と首都圏はかなり回復。関空48.1%、中部28.0%、その他56.2%というのは、やや厳しい印象。

 入国制限期間中も受け入れ態勢を整えて国際線を継続していた空港が、立ち上がりも早いというのは当然でしょう。前述のように業務渡航が22年度終わりから23年夏スケジュールの需要の核と考えて、便利な羽田空港に便が集中するのもわかります(ただし、羽田空港は元々2020年夏スケジュールから日中の発着枠拡大が決まっていて、その影響を差し引くと、単純に回復した分の数値はそこまでいかないはずです)。

 

 インバウンド主体でアジア圏からの便を多く受け入れていた空港ほど、特に中国路線の回復が遅れていることで、国際線の便数が戻っていない印象があります。コロナという言葉が最初に新聞に出てきた頃、関空の国際線搭乗エリアには大荷物を抱えた中国人観光客がたくさん、という写真が載っていたことを覚えています。

 

 

 

国により差のついたアジア

 日本は感染症対策としての入国制限や水際対策が比較的厳しい(ほかの国ではもうみんな気にしていないよ)という趣旨の話を聞くことが増えてきました。しかし、それよりも遥かに厳しく制限を継続しているのが中国。

 4ページ目で国別の状況を見てみると、中国の航空会社は2019年冬で週当たり1563.5便も日本に飛んできていました。これが、2023年夏はまだ365便。23.3%にしかなりません。アメ横にも京都にも外国人観光客が戻ってきているような気がしていますが、それでもまだ中国からのお客さんはすごく少ないんだろうというのが読めます。

 2ページ目に戻ると、アジア・オセアニア方面の就航便数は19年冬の57.9%、便数では▲1,824.5便。まだ戻ってこない分の3分の2は中国の航空会社ということがわかります。

 

 対照的に19年よりも既に便数が増えているのが韓国とベトナム。ただし、韓国は暖かい時期の需要が大きく、冬スケジュールと比べるとちょっと微妙かな、というところではあります。また、ベトナムの増加は貨物便が寄与。

 何にせよ、国によっては以前と同じかそれ以上の人と物の行き来があるわけです。

 

 アジア方面はLCCの割合が高く、満席にして飛ばせるほどの需要がまだ戻ってきていない(日本人が海外に行くのを躊躇うということもありますし、あとは燃油が高くて採算を取るのが厳しいとか、外的要因も含め)ため、中国以外も完全回復には今しばらく時間がかかりそう。

 

 

 

 まだコロナ前ほどの便数には戻っておらず、航空券を手配される方も苦労して便を探している状況かと思います。こういった統計データを眺めていると、どの方面にどうやって行くのが比較的確実なのか、この先はどうなりそうなのか、なんとなく予想がついてくる感じがします。

 

 スケジュール関連の申請と認可については、OFCでも各航空会社のお手伝いをしております。俄かに回復基調になり、細かな申請まで手が回らないという航空会社の方がいらっしゃれば、ぜひ当社営業までご相談ください。

地までしっかり確認していきましょう。

 

 

 それではまた。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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