【第38号】4. 運賃規則の雑学知識(その3)

 編集長の関本です。

 

 前回のテーマは、都市コードと空港コードの関係について、でした(【第37号】4. 運賃規則の雑学知識(その1))。

 ところで各種3レターコードを、わりと当たり前にアルファベット表記から連想してきましたが、このアルファベットにもなかなか奥深い要素がある、というのが今回のお話です。

 

 

 

それは何語なの??

 都市コード「LON」は「LONDON」から取られた、というのは誰にでもわかるような話で、その「LONDON」は言うまでもなく英語です。

 我々日本人としては、中学校(最近は小学校ですか)から慣れ親しんだ英語ですから、特に問題なし。でも、中には「これは一体どこの言葉なんだ?」と戸惑うような3レターもあります。

 

 たとえばチェコ(外務省の正式な呼称としては「チェコ共和国」)の首都プラハ。

 プラハというのは、チェコ語表記「PRAHA」をアルファベットで表したものと思われます。

 この都市の3レターは何でしたかね。そう、「PRG」です。これは比較的簡単な部類。でも、ちょっと待ってください。3文字目のGはどこから来たのか。

 プラハをほかの言語で表すと、英語では「PRAGUE」、ドイツ語では「PRAG」になります(ドイツの駅で国際列車の行き先を見ると、ドイツ語で「PRAG」と書かれていて、一瞬「プラハでいいのか?」と悩みます)。

 この英語ないしドイツ語が、3レターの元になっているのかな、と思われます。何にせよ、地元の言葉ではないものがベースになっているんですね。

 

 様々な言語が入り混じり、時代とともに国境が変わってきたヨーロッパですから、こういうことは珍しくないのでしょう。

 すぐお隣のオーストリアを見てみると、首都ウィーンのドイツ語綴りは「WIEN」。ドイツ人に「ウィーン」と言うと通じなくて、より本物に近い発音は「ヴィーン」ですかね。それはさておき、3レターの「VIE」は英語の「VIENNA」から来ている気がします。

 

 いろいろ見渡すと、複数の言語で微妙に異なる書き方・読み方があるところでは、共通言語としての英語を基本に3レターを決めたのかな、と思われます。

 と、ここまで書いて、国際機関ではフランス語を公用語にすることもあるよな、と気がついて調べてみたら、プラハは「PRAGUE」、ウィーンは「VIENNE」だそうで、3レターはこれが基という可能性もありそう。

 IATAのコードに関する記述を少し調べてみましたが、英語とフランス語どちらが優勢なのかは不明でした。気になります。

 

 

 

国が違うけど同じ都市?

 これも小ネタ的な話です。

 航空券を手配する際、うろ覚えの3レターを使うと大変だよ、というお話で、世の中には、同じ名前の都市が全然違う国に存在することがあります。

 

 アメリカ合衆国には、その国家成立の過程から、ヨーロッパに存在するのと同じ名前の都市が散見されます。街を開拓した人が、自分の故郷の名前を付けたから、というのが多いとか。

 

 その中でひとつ、フロリダ州にSt. Petersburgという都市があります。この連載の1回目でご紹介した、一時期「レニングラード」だったロシア第二の都市と同じ名前です。

 ちなみにこの「セント・ピーターズバーグ(フロリダ)」、音だけ聞いて綴りを想像するとSt. Petersbergになりそうですが、ドイツ語で「城」を意味する「Burg」ですのでご注意を。

 映画監督のスピルバーグは「Spielberg」。日本人の感覚だと同じ音に思えてしまいます。ドイツ語で「Berg」は「山」です。全然意味が違います。

 

 さて、寒いロシアにあるのは、ドイツ語風の読み方で「サンクト・ペテルブルク」。暖かいフロリダにあるのは英語に直して「セント・ピーターズバーグ」。アメリカ人に「St. Petersburgに行ったよ」と言うと、果たして暖かいフロリダに保養に行ったと思われるのか、それともバルト海クルーズに行ったと思われるのか。

 

 セント・ピーターズバーグは、メジャーリーグのタンパベイ・レイズ(日本人選手が在籍していたこともあり、意外に日本では知名度が高い?)の本拠地でもあり、行ったことあるという方もいらっしゃるかもしれません。ここの空港の3レターは、なぜか「PIE」だそうです。なぜ。この街が属するピネラス郡(Pinellas County)が由来なんでしょうか。

 

 3レターで見比べると、間違えることはないでしょうが、「St. Petersburgに行きたいんだ」ってメールを受け取って手配すると、危ないかもしれませんね。

 

 本気で間違えそうなのは「シドニー」。オーストラリアの玄関口シドニー(SYDNEY)にあるキングスフォード・スミス国際空港の3レターは「SYD」。ところが、アメリカ合衆国のモンタナ州にあるシドニー(SIDNEY)の空港は「SDY」。都市名を入力すると3レターに変換してくれる航空券販売サイトなんかありますが、よく見ないと、うっかり「SIDNEY」と打ってしまって全然違うところに運ばれるなんて話があったりなかったり?

 

 

 

 今回は、ややこしい名前と3レターの話でした。

 思い込みやうっかりで大失敗に繋がらないように、久しぶりに海外旅行を手配する際は、十分注意していきたいですね。 

 

 それではまた。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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