【第38号】3. 日本発運賃の歴史と変遷(その30)運賃と燃油サーチャージの関係

 前回のこの連載で、燃油サーチャージとは何か、どんな風に導入されて、変化してきたのか、ということをお話しました。

 長い目で見て、化石燃料に頼らない技術と共に燃油サーチャージは過去のものになるかもしれない、という終わり方でしたが、とりあえず近々ではジェット燃料と付き合っていかなければ、飛行機は飛ばせません。

 

 そして今月、次の改定で燃油サーチャージが更に上がるというニュースを目にしまして、もう少しこの話をしたいな、と考えました。

 今回のテーマは、「運賃に対して、燃油サーチャージはどのくらいの負担なのか」です。

 

前回までの記事はこちら

 

 

「サーチャージ」の位置付け

 航空会社に限らず、フェリーなど海運の世界にも、原油価格に連動して上下する燃油サーチャージは存在しますし、自動車(バスなど)だって、ガソリン価格が上がればコストを旅客や荷主に負担してもらおうという動きになるでしょう。

 しかし、思うに、飛行機ほど燃油にコストが左右される運送形態はほかになく、シンガポールケロシンの値上げ(と円安)は、日本の航空会社と旅客を直撃します。

 

「サーチャージ」という言葉の意味をそのまま捉えると、あくまでも追加されるものであって、本体の運賃が存在する脇に控えている、と言ってもいいでしょうか。運賃10万円なら、せいぜい1万円くらいまでだよね、というのが一般的な感覚ではないかと思います。

 

 しかし、前回見たように、ジェット燃料はここしばらく相場が高止まりしており、航空会社が設定する燃油サーチャージも、上がっていく一方。

 およそ「サーチャージ」という言葉から想像されるレベルではない高値に入っています。

 

 

 

直近の燃油サーチャージ額

 上がっていると繰り返していますが、実際どのくらいなのか、JALの今年春からの推移をまとめてみます。

 

2022年4・5月6・7月8・9月10・11月
韓国行1,800円4,100円5,900円7,700円
ハワイ行12,700円23,600円30,500円37,400円
ヨーロッパ行20,200円36,800円47,000円57,200円

 

 こうやって比較すると、どんどん上がっているのがよくわかりますね。

 4・5月時点でヨーロッパ(北米も同じ)往復すると40,400円というのは、なかなか重い負担ではありますが、10月からは10万円を超えてしまいます。

 半年で短距離の韓国行きが4.28倍、長距離のヨーロッパ行きが2.83倍と、信じられない伸び方。これ、発券日ベースですから、早めに買っていた方はだいぶ助かっているということもあるかもしれません。

 

 しかし、韓国まで片道7,700円って、LCCの安い運賃と同じくらいですかね。安売りが得意な旅行会社だと、ソウル3日間2万円前後からのツアーを見かけることがあります。そういうのには、JALは絶対に登場しないですね。または「燃油サーチャージ別途」で売っていたら、イメージしていた旅行代金本体の倍近い請求総額になったりして。

 

 ツアーだといろんな要素が入ってきてわかりにくいので、JALのウェブサイトで航空券を照会してみます。

 上記とは別の東京発バンコク行きで探してみました。現在は8・9月の燃油サーチャージ額が適用されますので、これより更に一段階上がると思っておいてください。

 

 例として、11月。安い日を探すと、往復44,000円のEconomy Saverに空席が見つかりました。ウェブサイトで予約を進めていくと、見積書を表示できまして、そこで明細がわかります。

 長いので、いくつかまとめています。

 

運賃44,000円
燃油・保険50,200円
諸税7,020円
合計101,220円

 

 タイ行きの燃油サーチャージは片道28,700円に設定されていて、往復だと49,400円。これにテロ対策の航空保険料を加えて50,200円也。って、運賃本体より高いじゃないですか。本当に倍ですね。

 

 

 

12月以降の燃油サーチャージはどうなる?

 と書いてみたものの、世の中どうなるかは全く分かりません。

 今の世界情勢を見ると、経済政策の違いから、まだ円安が進み、仮に原油価格がある程度頭打ちになったところで、別の要素で日本円建ての基準が数段階上がっていく可能性はある気がします。

 

 10・11月の燃油サーチャージは、JALが設定しているテーブル(2か月平均のシンガポールケロシン価格がどのレベルなら、燃油サーチャージがいくらになるかを定めた表)上、AからOまで15段階あるうちの一番上。と言っても、常に上限を超え続けており、テーブルを追加して対応しているように思われます。

 ちょっと前なら、せいぜい10段階もあれば間に合うかな、という感じだったのですが。気がついたら20段階になっていた、なんてこともあるかもしれませんね。

 

 ちなみに、燃油サーチャージは機械的に計算して決めることができる(と言うより、それで旅客に公平に負担を求めるべき)性質の追加料金ですが、これが高くなり過ぎて航空券の売れ行きが鈍くならないよう、代わりに運賃額を下げて調整する航空会社もあります。

 逆に、「来月から燃油が下がって嬉しいな」と思っていたら、その瞬間に運賃を全体的に上げて、狙っていた安い運賃が(そのクラスには空席があるのに)買えない、という現象に遭遇したこともあります。このあたりは、航空会社ごとの営業上の采配ということでしょう。

 

 

 

 ようやく海外旅行に出られそうだという時期になって、航空券はずいぶん贅沢品になってしまったような感もあります。この先、各航空会社は、旅客を集めるためにどのような施策を進めるでしょうか。

 ひとつは、瞬間的に安いセール運賃を出してくる、ということもあるかもしれません。その際は、リアルタイムでのオンライン販売に、ぜひOFCの日本語運賃規則をご活用ください。タリフ情報のデータでのご提供について、詳しくは営業担当者よりご案内いたします。

 

 それでは、また次回。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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