【第20号】4. 日本発運賃の歴史と変遷(その12)特別運賃とその種類

 運賃額を見ていく前に、OFCタリフに掲載されていた特別運賃にどんなものがあったのか、今回はご紹介していきたいと思います。

 2018年に廃止されたIATA運賃。かつてはこれがよく売れていました。その中には普通運賃(最後は「IATA FLEX運賃」という名称に変わりましたが)や、旅行者の属性による割引などいくつかの設定がありつつも、基準となるのはやはり「普通運賃」。高額な普通運賃に対して、需要喚起のために各種割引運賃が設定されて、それが「特別運賃」と呼ばれていたわけです。

 

 

現在の特別運賃

「特別運賃」と言われると、普通は使えない、何か特殊なもののように聞こえます。しかし、現在では普通運賃を使う人の方が圧倒的に少なく、これを読んでいる皆さんが個人旅行するとしたら、(IT運賃を使うパッケージツアーを除き)特別運賃を選ぶでしょう。

 また、出張で海外に行かれる方も、企業契約運賃を選ばなければ、特別運賃から適当なものを探すのが一般的。高い普通運賃を出張旅費として出してくれる会社が、今どきどのくらいあるのか、と思ってしまいます。

 

 さて、刊行されたばかりの『日本発運賃一般規則』2021年度版を開きまして、特別運賃の解説が載っているのは、ずっと後ろの方。古い時代の名残でもありますが、普通運賃を基準として、それとの違いはどこか、という観点で特別運賃が捉えられています。恐らく、旅行会社で運賃について新入社員に教える際も、同じような段取りなのではないかと想像しています。

 

 一般規則の特別運賃の章、最初に特徴として、こんなことが書かれています。星の数ほど設定されている特別運賃、その説明は、たった5行なんですね。

 

① 特別運賃の特徴

キャリア普通運賃より低額に設定されており、市場の動向や需要に応じて変動し、予約・発券期限、変更、取り消し払い戻しなどの利用条件に制約がある。

個人向けの運賃と包括旅行(地上輸送や宿泊、観光などを含むパッケージツアー)用の「キャリアIT運賃」がある。

 

 あまりにも簡単だと思われるかもしれませんが、特別運賃にもいろいろな種類があり過ぎて、一般的な説明と言うと、この程度しか書けないのが実のところ。果たしてどんな制約があって、どう使えるのか、という点は、ぜひOFCのセミナーに参加して勉強してみてください。

 

 もちろん、それだけで特別運賃の解説が終わるわけではなく、この「航空券の有効性」の項のように、普通運賃とのちょっとした違いにも丁寧に触れていますので、『日本発運賃一般規則』、まだお求めでない方は、ぜひお手元に揃えておいていただければと思います。

 

1984年に特別運賃はどう説明されていたか

 遡ること三十数年。最初のOFCタリフが出版された際、特別運賃はどういうものだったのかを見てみましょう。

 

 当時、タリフ書籍冒頭で特別運賃の概要について触れているページは、こんな感じ。

 今よりも細かく運賃の種類など解説しているように見えますが、今では見かけないものも多々あるような。

 たとえば、「回遊運賃」は観光旅行などで使える個人向けの運賃で、最長旅行期間(当時は有効期間)が1年間の普通運賃に比べて、早く旅行を終了しなければいけないという制限がありました。それに更に、早めに買わないといけないという条件を追加したのが「アペックス運賃」。これ、もし今航空券を買うんだったら、「30日前までに発券」とか「75日前までに予約、その後7日以内に発券」とか、細かいルールが設定されているのは当たり前の話で、「なんでわざわざ分けて呼んでたの?」という気もしないでもありません。

 ちなみに、特別運賃はその最長旅行期間の長さで、運賃額にかなり差がついているような印象を受けていましたが、最近はとりあえず12か月に揃える航空会社も出てきているように感じられます。ぼくが大学生の頃、ノースウエスト航空の怪しい東南アジア行き格安航空券(たぶんPEXじゃなくてITだった?)は、15日間有効とかずいぶん短い代わりに安いのが出回っていて、、、とか言ってると、歳がバレますね。やめましょう。

 

IT運賃の一般規則

 IT運賃の話をしましたので、ついでにITの解説も見ておきます。

 全体的な規則のページを開くと、個人用と団体用があり、地上手配と組み合わせないと売ってはいけないことがわかります。

 

 また、「最低販売価格」という規則項目があり、地上手配を限りなく安く抑えて、より安価な特別運賃として売られてしまわないような配慮が見られます。

 旅行会社が仕入れて、それにホテルや現地の移動をつけて、パッケージとして売るための運賃ですから、流通は航空会社から一般消費者へ直接、ということにはなりません。「回遊運賃」がまだ相当高かった時代、この「IT運賃」に地上手配をつけずにバラ売りしたら、安く海外に行きたい人にたくさん売れる? そういう話もありました。昔話です。今は航空会社が直接販売できる、昔の「回遊運賃」や「アペックス運賃」の下限額の制限がなくなって安価になりましたから、ITは本当のパッケージツアーでしか見かけないような気がします(と思っているのは、旅行しているぼくの印象で、実はIT券をまだまだたくさん扱っているという旅行会社もありますね)。

 

 その他、IT運賃には、見慣れない規則がいろいろとついているのがわかりましたので、ついでにご紹介しておきます。

 

ツアーコードとは

 OFCという会社で働いていると、Fare Basis Codeには敏感になります。普通運賃のコードは単純なものが多いですが、特別運賃は長く、慣れてくると「これって香港発じゃない?」とかいうことも想像できるようになってきます。

 で、いろいろ勉強しているうちに、GDS上に「ツアーコード」なるFare Basisとは別のコードが登場することに気付きました。PEX世代のぼくには、これが何のことなのかさっぱりわからなかったのですが、1984年のタリフを見て解決。

 

 なるほど、航空会社が、IT運賃を使ったパッケージツアーを販売する旅行会社に対して、自分の会社のどのIT運賃を使うつもりなのかわかるよう、パンフレットにも記載させていた情報のことだったのですね。

 最近ではパンフレットは印刷物ではなく、オンライン上のデジタルパンフレットとして電子化されるか、あるいはウェブサイトの説明が全てという場合もあります(ツアーに申し込むと、申込書と一緒にウェブサイトを印刷したものを送ってくれる旅行会社もありましたが、最近は全部画面上で完結して、手元に紙は何も残らないような)から、ツアーコードが未だに生き続けて運用されているのかは? ご存知の方いらっしゃれば、ぜひ情報お寄せください。

 

 最後に、IT運賃を使った旅程作成上の要件というページをご紹介して、今回の記事を終わります。

 

 ちょっと細かくて見えないかもしれませんが、目的地の各地区ごとにルールが細かく決まっていまして、やはり多いのは「あんまり自由行動ばかりにしてはいけない」とか「宿泊を全体の日数の何割以上つけること」といったような、あくまでも「ツアーなんですよ」という体裁に関わること。

 今は当たり前のように、現地では全部自由行動というツアーも多いですから、この時代はみんなで連れ立って有名観光地を回っていたのだな、という雰囲気が窺われる規程でもあります。

 

 

 今回もお付き合いありがとうございました。次回もお楽しみに!

 

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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