【第19号】3. 日本発運賃の歴史と変遷(その11)OFCタリフシリーズの変遷

 1984年、OFC創業当時のタリフ書籍をご紹介してきましたが、今回は、そのタリフシリーズがどう変わってきたのか、OFCの歴史として少しご紹介したいと思います。

 

 

創刊から1989年まで

 OFCがスタートした当時、タリフの発行は年2回、4月と10月でした。IATA運賃が主流で、特別運賃は上期と下期の半年ずつ設定されるのが普通だった時代、今のように毎日運賃が変わるということも恐らくあまりなくて、4回発行する必要性も感じられなかったのではないかという気がします。

 

 今とは比べ物にならないほど本は薄かったですし、規則もそこまで複雑ではなく、原稿の締め切り間際の忙しさも、もしかしたら今とは違ったのかな、という予感がしました。

 

1990年代

 転機となったのは1990年。この年、7月に「臨時改訂版」が発行されます。6か月ごとの改訂では追いつかないほどの変更が発生し、ちょうど真ん中の7月にも発行したという雰囲気が窺われます。この段階では、あくまでも「臨時」でした。が、91年1月版からは「臨時」の文字が消え、いつの間にか年4回発行が固定化されます。

 

 臨時に発行しなければならないほど大幅な改訂があったのか気になり、ページをめくってみたところ、わりと細かい変更が散らばっていました。

 当時の本は、前回号から変更された箇所が太枠で囲まれていて、何が変わったのかが見やすくなっています(今は、いろいろ変わり過ぎるので、それをいちいち追っていくのは無理)。全ページ見て、一番変更が多いと思われる箇所をご紹介しましょう。

 グアム・サイパン行き特別運賃のページ。太枠で囲んであるところ、おわかりでしょうか。上下それぞれの表の右上欄外に「札幌/仙台発新設(1990年7月23日発効)」と書かれています。それまでは、東京・大阪・名古屋・福岡(と、運賃により鹿児島・沖縄)発の設定しかなかったものが、地方発の特別運賃も販売されるようになったんですね。しかし、なかなか高額です。

 

 ところで、この時代の書籍を見ると、ところどころ緑色の紙を使っているページが挟まれていることに気がつきます。

 これ、もちろん飾りではなく、意味があります。書籍の冒頭「まえがき」を引用しましょう。

 

(注)ウグイス色ページに記載の規則,運賃は政府認可を取得しておりませんので適用できません。政府認可時期は未定です。

 

 ここで、この連載の1回目を思い出してください。日本発着の運賃は全て政府の認可を受けなければならない、と定められているのをご記憶でしょうか。

 

 これから認可を受ける予定(でも、いつ認可を受けられるかははっきりしない)運賃も掲載されていて、それは一目でわかるよう、紙の色を変えていたのでした。

 当時から、OFCの主力事業のひとつは「申請代行業務」です。外国航空会社が国土交通省に運賃の認可を求めるにあたり、その申請を代行するという仕事で、ですからOFCはいつ認可されたのか、あるいはまだされていないのかという情報を、リアルタイムで確認することができました。

 これは現在も変わらず、多くの航空会社の申請を引き受けており、故に膨大な情報が詰まったタリフを発行できている、というわけです。

 

表紙デザインの移り変わり

 OFCタリフシリーズは、この2021年度から表紙デザインを一新し、見た目のイメージがかなり変わりました。もちろん、2020年度までのデザインは、1984年からずっと使っていたというわけではなく、途中で何度かリニューアルを経ています。

 

 まずは創刊当時のもの(左)と1992年4月号から変わったもの(右)。左の方は、途中で赤い部分がオレンジ色に変わっていますが、長らくデザインの変更はなかったようです。

 

 1992年4月版の表紙をめくると、その裏側に現れるのはレンタカー大手ハーツのクーポンの広告。今でこそ紙での広告出稿が減り、OFCタリフに広告を掲載していただく会社も減りましたが、当時は海外旅行を扱うには必須のOFCタリフでしたので、いろいろな宣伝が目につきます。ちなみに、裏表紙は「USAirのカリフォルニア・シャトル」という航空会社の広告でした。いつか、「OFCタリフの広告集」というテーマで、懐かしの航空会社や、レトロな写真などご紹介したいと思っています。

 なお、1992年4月版を製作している時点で、4月からの変更について政府認可が下りておらず、書籍全体の前3分の1程度は「変更予定分」の運賃・規則に割り当てられています。それ以前の書籍よりいくらか分厚くなりましたが、この「変更予定分」がなければ、そんなにかわらなかったでしょう。この時期はまだ、運賃設定が複雑ではなかったと言えます。

 

 その後のデザイン変更は1998年と2000年。このあたりは、ご記憶にあるベテランの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 1998年時点で、IT運賃の掲載が別の書籍になります。ご注目いただきたいのは一番上の小さい文字。「増刊No.202 OFCタリフポケット運賃表」と書かれています(読めなかったらすみません)。

 この頃、運賃額は『OFCタリフポケット運賃表』が参照されており、この書籍は毎月発行でした。旅行会社の方が営業に持ち回れるよう、小さなサイズで発行されたものです。で、これはもちろん掲載できる情報量に限りがありますので、運賃表しか載っていません。詳しい規則は、こちらの大型版で確認する、という段取りになっていました。

 この書籍は大きく2部に分かれており、1部はIATA運賃、2部はゾーンPEX運賃の規則。前者が76ページ、後者が165ページのボリュームで、航空会社ごと独自の特別運賃が相当あるような印象ですが、今ほどではないですね。ちなみに2部の最初の方には収録航空会社が一覧になっていまして、CP(カナディアン エアラインズ インターナショナル リミテッド)やSR(スイス航空株式会社)など懐かしい名前があり、第3地区行きに度々NW(ノースウエスト航空会社)が現れるので、「そう言えば、そんな時代もあったな」と懐かしく思いました。

 

 さて、2000年4月版は書籍のタイトルが変わっています。『日本発特別運賃データ集』とはどういうことかと言うと、本の掲載運賃数が増え、検索するのが大変だという声を受けて、CD-ROMをつけたから「データ集」になったのでした。

 申し込みフォームを見ると、「書籍+CD-ROM」か「CD-ROMのみ」を選べるようになっていて、一時期、本だけの販売はしていなかったことがわかります。2021年度は多くのお客様が書籍から、テレワークなどでも使いやすいWEBタリフに切り替えられました。メディアを送るのではなく、オンラインで参照していただく形に変わっていますが、運賃情報をデジタル化という動きは、20年前からあったんですね。

 

 それぞれの本に載っている運賃額を比較したかったのですが、長くなったので、今回はタリフの値段の移り変わりをご紹介して終わります。

 

1984年4月版日本発特別運賃1,000円送料200円
1990年4月版日本発特別運賃1,200円送料260円
1992年4月版日本発特別運賃1,500円
1998年4月版日本発特別運賃(IT運賃を除く)1,900円IT運賃は1,100円
2000年4月版日本発特別運賃(IT運賃を除く)データ集11,340円書籍+CD-ROM

 2000年10月版からは書籍のみの販売が復活しましたが、1冊6,800円。このあたりで、今の価格に繋がるレベルになったという感じでしょうか。掲載量が増えていく中で、90年代まではあんまり値段上がってなかったんだな、というのが正直な感想です。

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。次回もお楽しみに!

 

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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