【第30号】1. 日本発運賃の歴史と変遷(その22)日本における初期のキャリア運賃(続き)

 前回は1994年、OFCタリフにキャリア特別運賃のページが初めて登場したときの、TC1行き運賃について、少しご紹介しました。今回は、TC2で2題です。

 

前回までの記事はこちら

 

 

大雑把な設定都市

 新型コロナウイルスの影響で国際線がほとんど飛ばなくなり、安い運賃の設定もなくなってしまった今、ちょっと実感が湧きにくいかもしれませんが、特別運賃は年々複雑化し、規則内容そのものはともかく、設定都市による運賃額の違い、直行便と経由便の差、日本国内線の追加、更に細か過ぎるQサーチャージと、単に運賃表を見ただけでは正確な運賃額を把握できない状況になっています。

※ OFCタリフシリーズでは、多くの運賃について、この数年で運賃表の掲載を終了しています。上記のように複雑な体系でわかりにくいこと以上に、日々変動して、最新の金額はGDSを参照することでしか追えなくなってきたためです。

 

 しかし、1994年当時のタリフを開くと、何とも大雑把と言うか、単純な運賃表が載っていました。まずはルフトハンザドイツ航空のもの。

 

 

 運賃名称の『ユーロマンティック運賃』というのが微妙に懐かしいですね。エコノミークラスの、至って普通のキャリア特別運賃です。

「適用期間・運賃」を見ると、日本のどこを出発するのでも同じ金額。更に、目的地はドイツの都市どこでも、という感じで主なところは全部並列になっています。東京発フランクフルト行き直行便と、沖縄発ブレーメン行き(たぶん成田とフランクフルトあたりで乗り継ぎ)が同じっていうのは、ちょっとおかしいんじゃないかという気もしますが、「直行便で3泊5日で海外旅行」みたいな使い方をされていたわけではなく、基本はいろんな都市を巡って仕事するような出張向けだったのかな、と思えば納得感もあるでしょうか。

 残念ながらタリフだけでは、その裏にある様々な追加要素を読み解くことができず、全く同一金額で地方都市まで乗り継げたのかは明確になりませんでした。が、この時代は燃油サーチャージも航空保険料もありませんでしたし、せいぜい空港税の追加くらいでいけたんじゃないでしょうか。

 

 

 

多過ぎる設定都市

 続いてはANAです。

 

 

 1994年は関西国際空港が開港した年で、ANAは海外路線を拡大していましたので、直行便が飛んでいるヨーロッパの都市もいくつかあったのではないかと思われます(と言いながら、ANAに関する正確な資料が見当たらず。意外にもローマ線が飛んでいたらしい、というのは発見しました)。

 運賃表下部、欄外の注釈的に同額で行ける都市が列挙されていますが、まぁ多いですね。最新の設定では追加が必要な都市も、みんなロンドンと変わらない値段で行けちゃいます。スカンジナビア半島のベルゲンも、シチリア島のパレルモも、ヨーロッパの北から南まで幅広くカバー。最も安価なベーシックの時期なら152,000円だそうですから、なかなかお手頃。

 

 さすがにイスタンブールの設定が異なるのは仕方ないでしょう。テルアビブとかチュニスとかはどうだったんでしょうか。あと、ロンドン乗り継ぎのダブリンの方が、アテネよりよほど近いのではないかと思いましたが、少し違うんですね。ロンドンまでこれで行って、LCCを別に買った方が安いと思ってしまうのは、1994年ではなく現代の話ですか。

 

 

 

 このように、タリフを1冊開いただけで、今とはだいぶ違う運賃の様子を垣間見ることができます。奥が深い世界ですね。

 それではまた。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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