【第45号】2. 運賃規則の雑学知識(その9)

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【第36号】4. 運賃規則の雑学知識(その1)
【第37号】4. 運賃規則の雑学知識(その2)
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【第44号】3. 運賃規則の雑学知識(その8)

 

 これまで、このコラムでは都市や空港の3レターをいろいろと取り上げてきました。

 その中でひとつ、スペースの関係で取り上げられなかった話が、「新しい空港ができると何が起きるのか」というもの。ある都市に元々空港があり、手狭になったなどの理由で別の場所に新しい空港が開業します、ということになると、3レターが新たに設定されるのか、それも一緒に引っ越すのか。

 こんなことがありましたよ、という実例でご紹介したいと思います。行ったことある方がいれば、「そういうことだったのか」と振り返っていただけると嬉しいです。

 

 

 

1. 空港コードごと引っ越した例(イスタンブール)

 イスタンブールの空港と言うと、ぼくもずいぶん前に一度だけ行ったことがあるのですが、アタテュルク国際空港という、舌を噛みそうな名前がついていました。

 そのときのことを思い返しても、すぐ近くに住宅地が密集していて、乗り継ぎの都合で1泊した空港ホテル周辺にもお店が多くて便利だった記憶が。ただ、拡張の余地に乏しく、離れた場所に全く新しい空港が建設されました。これが2019年に開港し、現在日本からも直行便が飛んでいるイスタンブール空港です。

 

 旧空港はイスタンブールの玄関ということで空港コードISTが与えられ、都市コードと同じ。実はイスタンブールにはもうひとつ比較的小さな空港もあるのですが、それはそれとして。

 

 で、新空港が開業するとコードがどうなるのかと思って調べた当時、ISTがそのまま使われることを知りました。ただ、一夜にして完全移転するのはなかなか難しく、新空港は開業前にテストで飛行機が飛ぶこともありますし、旧空港には貨物便などが一部残り、ISTではないもう一方の空港にも何らかのコードの割り当てが必要です。そこでイスタンブールは3段階方式を取り、

① アタテュルク空港が通常営業している間、新空港にコードISLを割り当て、開港準備をする。

② 大部分の便が新空港に移る日に、アタテュルク空港とコードを入れ替え、新空港にISTを割り当てる。

③ 新空港稼働以降はアタテュルク空港がコードISLを引き継いで営業する。

 というものです。

 

 個人的には、日によって同じコードでも空港が違うと、乗り継ぎならともかく、そこから出発あるいは到着するお客さんは混乱したんじゃないかという気がします。大丈夫でしょうか。

 

 

 

2. 使われていなかった都市コードを割り当てた例(ベルリン)

 ベルリンにはブランデンブルク国際空港(BER)という最新の立派な空港があるそうですが、ぼくが初めての海外旅行で降り立ったのは、テーゲル空港(TXL)でした。

 ベルリンは、その歴史的経緯から、西ドイツ領にあった(ベルリンの壁の内側の)テンペルホフ飛行場、テーゲル空港と、東ドイツ領のシェーネフェルト空港(SXF)の3つの空港があり、壁崩壊後も、主に西側の国々からの便はテーゲルに、ソ連(当時)からの便はシェーネフェルトに着くという棲み分けがされていました。テンペルホフは歴史的建造物で素敵なのですが、狭くて短距離便しか飛んでいなかったので、また別の話(テンペルホフが狭いからテーゲルを作ったという経緯もあり)。

 

 しかし、テーゲルはあまりにも狭く、ヨーロッパ有数の大国の首都としては寂しい雰囲気。一番郊外にあり、新たなターミナルビルなどを建てやすいシェーネフェルト空港の敷地を利用して、ベルリン・ブランデンブルク国際空港が登場したのは2020年。これも紆余曲折あり、開港が大変遅れたという話です。

 既存3空港はどれも都市コードBERを名乗っていませんでした(西と東でどっちが使うかで駆け引きがあったのかは定かではありません)。新たな首都の顔は堂々と空港コード「BER」を使用。これだと、さっきのイスタンブールみたいに同じコードで場所が違うということがなくてわかりやすいですね。

 

 ちなみに、同じ敷地を使っているため、形式的にシェーネフェルト空港は閉鎖され、SXFは空港コードとしては最早存在しません(実態は、ターミナルビルが今でもBERの一部として使われているとか)。

 テーゲルも営業を終了して、現在はブランデンブルク国際空港が首都ベルリン唯一の空港となっています。

 

 

 

3. 新空港には新たなコードを割り当てた例(北京)

 ここまでは新空港に主役の座を譲る例を見てきましたが、今度は新旧どっちも存続する場合。

 

 北京には、多くの方が利用したことがあるであろう首都国際空港、3レターはPEKが元々ありました。が、人口の増加や人と物の移動が増えてきたことから手狭になり、郊外に新たな空港を建設することになりました。これが北京大興国際空港で、2019年にオープンしています。

 

 ただ、大興国際空港で、首都国際空港の需要を全て賄えるかと言うとそういうわけにはいかず、航空会社ごとに空港を分ける形で両方が存続することに。首都国際空港は引き続きコードPEKを使用、新しい大興国際空港にはPKXのコードが振られました。

 さすがは中国、スケールの大きい話ですね。

 

 同様の例はドバイ(元々のDXBと別に、アル・マクトゥーム国際空港DWCが開港)にもあり、航空需要が急激に伸びている国では、そういうことがあるんだな、と驚くばかりです。

 

 

 日本ではこの先、国際線がたくさん飛ぶような大きな空港のオープンはなさそうですが、世界に目を向けると、新空港オープン時には、コードだけ見ても、いろんなことが起こるんですね。

 

 航空券を買う際や手配する際には、知っているつもりの空港コードに騙されず、立地や乗継便の出発地までしっかり確認していきましょう。

 

 

 それではまた。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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