【第39号】2. 日本発運賃の歴史と変遷(その31)OFCタリフに掲載された広告たち

 この連載の最初の方で、懐かしい八十年代のOFCタリフシリーズを見た際、今は亡き航空会社の広告が掲載されていることに触れました。

 当時、日本発の航空券と別に、現地で周遊するためのチケットにどんなものがあって、どう販売されていたのか、今とは違った形態を知る手掛かりになればと思い、今回取り上げてみます。

 

前回までの記事はこちら

 

 

リパブリック航空の団体向け運賃

 OFCタリフシリーズが創刊された1984年頃、日本人の海外旅行は団体が中心でした。

 非常に高価だった航空運賃が、そこそこ大きな団体向けに旅行会社へ供給されることで、徐々に値下がりしてきたというのは、これまでも何度か述べた通りです。

 

 どうせ遠い国に行くのだから、いろんなところを見て回りたいもの(21世紀のように、3泊5日でヨーロッパとか、そういう時代じゃなかったわけですね)。

 1984年10月版の裏表紙に、こんな広告が掲載されていました(創刊号である4月版には、広告を募るのが間に合わなかったのか、掲載なし)。

 

 

 リパブリック航空の、10名以上の団体向けエアパスです。

「ん? リパブリック航空って何?」と思うのは、若い方でしょう。ぼくも知りません(若くないけど)。

 調べてみると、現在アメリカ合衆国内の地域間運送を行っているリパブリック航空とは別の会社で、1980年代まで運航していたそうです。1986年にノースウエスト航空と合併。後、ノースウエスト航空は現在のデルタ航空と合併していますから、リパブリック航空は影も形もない状態ですが、上の画像をよく見ていただくと、リパブリック航空のハブ空港はデトロイト、ミネアポリス、メンフィスの3か所。デトロイトとミネアポリスは、今もデルタ航空便が多数運航されているので、この時代からの流れを感じられるかもしれません。

 

 それはさておき、ロサンゼルスからラスベガス往復など、観光客向けの団体運賃の例が紹介されています。

 日本発の運賃と組み合わせて、周遊旅行の日程を組んでいたんだな、というのが窺われる広告でした。

 

 

 

トランス・ワールド航空のサービス広告

 続いては1985年4月版から、トランス・ワールド航空の広告が掲載されていたもの。

 

 

 この時代をご存知の方は懐かしいと思われるかもしれませんが、大西洋路線に強く、日本ではあまり馴染みのない航空会社でした。

 国内線よりも国際線中心の路線網だったからなのか、高級路線でアンバサダークラス(要はビジネスクラス)の座席を紹介しています。今の基準だと「プレミアムエコノミークラスかな」と思わそうな雰囲気ですが、ワイドボディ機に横6席だそうです。当時からB747なんかの大型機を運航していて、それで6席は、今の感覚からしても結構余裕ありますね。

 運賃とは特に関係ありませんが、そんな歴史も垣間見えるのが、OFCタリフシリーズです。

 

 

 

見慣れない航空会社

 今度は、ぼくが「なんだこれ?」と思った会社の広告です。

 

 

 PSAって何だろうと思ったら、「パシフィック・サウスウエスト航空」だそうで。全然聞いたことありませんが、USエアウェイズと合併し、後にいろんな再編があって、今はほぼ記憶にも残っていない感じでしょうか。一部、関係者の方は懐かしいと思うのかどうか。

 

 西海岸のサンディエゴを拠点としていた会社らしく、広告も西海岸に特化していますね。ロサンゼルス/サンフランシスコ/ラスベガスのゴールデン・トライアングル。いいですね。

 この時代、ロサンゼルスとサンフランシスコの間は30分間隔で1日62便も飛んでいたとのことで、1社でこの数はちょっと信じられません。日本で言うと、東京と大阪の間ですか。全社合わせればこのくらいになるでしょうけど、単独ではそこまでの数になりません(発着枠が増えたら飛ぶのかと言うと、さすがに競争も厳しいところで、それはないのではないかという印象)。

 

 いやいや、現地では本当にバス感覚なんですね。ロサンゼルスもラスベガスも行ったことないので知りませんでした。

 

 

 

アメリカの空を支える(でも日本に飛んでいない)会社 

 日本に就航していない会社が、なぜOFCタリフシリーズに広告を出していたのかと言えば、海外手配する旅行会社の方に「現地ではこうやって繋げばいいのか」ということを知ってもらい、販売数を伸ばすためでしょう。今みたいにネットで調べることはできなかったわけですし、タリフをめくりながら、どのチケットを売ればいいのか考える時代ですよね。

 

 というわけで、アメリカではかなり規模の大きい会社ながら、日本には飛んでいなくて、エアパスを集中的に広告掲載していた会社の例をひとつ。

 

 

 

「USAir」と書いてありますが、先ほどのパシフィック・サウスウエスト航空(PSA)を吸収合併し、現在はアメリカン航空の一部になっている会社です。最後はUSエアウェイズという名前で、その方が認知されているかもしれません。当時は「USエアー」でした。

 

 上は1989年4月版。「USAIR PIEDMONT」とロゴに書かれているのは、掲載が、ピードモント航空との合併が完了する少し前のタイミングだったから。この時期、アメリカ合衆国内では、航空会社の合併が本当に多く、タリフをひっくり返すと、いろいろな「そう言えばあったな」が発見されます。

 ピードモント航空が得意としていた南東部路線(画像では青い線)が強調されているように思われます。

 

 対して下の画像は、少し下った1991年1月版。左下の地図を見ると、路線の統合は完了したらしく、赤い線しか見えません。そして、明らかに東部路線が多い航空会社なのに、広告の中心はロサンゼルスとサンフランシスコを結ぶ西海岸の最重要路線。あまり西部のイメージのないUSエアーが、敢えて日本人向けに考えた広告なのかな、という気もします。

 飛行機で1時間ちょっとか。じゃあ、電車だとどうなのかな、などと東京=大阪の感覚で考えてしまうので、これも調べてみたら、アムトラックで軽く半日かかることがわかりました。

 

 アメリカの人にとって、国内線は本当にバス感覚。日本では知られていない会社や路線もたくさんあるわけです。

 現在は、再編が進んで、大きい会社いくつかに絞られてきていますが、それでも、日本に就航していない会社もあります。残念ながらOFCタリフシリーズの紙での発行はお休みとなってしまったため、WEBタリフで広告を見直して楽しむことはできません。でも、WEBタリフの「日本発以外検索」で調べてみると、意外な会社の運賃を発見できるでしょう(航空会社コードを指定する必要があるため、これはという会社があれば、先に2レターを確認しておいてください)。

 日本発以外の運賃は自動翻訳での表示となり、訳の日本語が今一つというときもあるかと思います。その際は、「訳質UPリクエスト」をお送りください。皆様の役に立つWEBタリフとなるよう、努力してまいります。

 

 

 それでは、また次回。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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