【第42号】3. 日本発運賃の歴史と変遷(その34)LCCはどの程度定着したか

 ここ2回ほど、統計的な話を主にして、運賃額については直接触れていませんでした。

 今回は久しぶりに国土交通省の資料を紐解きながら、運賃の仕組みが大きく変わった要因のひとつであるLCCが、実際にどの程度浸透しているのかということを見てみたいと思います。

 

前回までの記事はこちら

 

 

LCCって何だっけ

 この記事をご覧になっている方のほとんどは旅行あるいは航空業界に関わっているはずですから、今更LCCについて一般的な解説をする気はないのですが、明確な定義がないのがLCCです。

 日本国内で言うと、JALやANAより運賃がやや安いけど、無料機内サービスの範囲や運賃に含まれる荷物の重量がいわゆるLCCよりも緩い航空会社はLCCなの? そうじゃないの? というような話もあります。

 ひとまず、今回は下にリンクを張る国土交通省の白書に「低コストかつ高頻度の運航を行うことで低運賃の航空サービスを提供する航空会社のことである」と書かれているので、なんとなくそういうものなんだな、と思っておきます。特に「高頻度」というところが重要で、折り返し時間が長めに取られていたり、早朝や深夜に飛行機が地上で遊んでいると、「あ、この会社はLCCじゃないんだな」という気がしますね。

 

 そんなLCCは、日本においてはPeach Aviationやジェットスター・ジャパンが就航した2021年を「LCC元年」として、シェアを徐々に拡大しています。

 LCCという言葉が一般に浸透し始めた当初は、「安いってことは危ないんじゃないの?」というような反応もありましたが、今ではみんな当たり前のように乗っています。と言っている自分も、日系ならPeach Aviationとジェットスター・ジャパン、外国社はエアアジアグループのいくつかとスクートなど乗ってみて、安く移動できるので全く不満は感じませんでした。

 さすがに2005年くらいだったかな、日本でLCCという言葉をほとんど聞かなかった時代にヨーロッパで乗ったライアンエアーやイージージェットには少々戸惑いましたが、最近では慣れたものです。

 

 

 

各地域のLCCシェア

 さて、今回参照するのは国土交通省の「交通政策白書」です。

国土交通白書(下方の「白書等リンク」から交通政策白書のページに飛べます)

 

 役所のウェブサイトはしばしば構成が変わり、リンク切れになる可能性があるので、トップページに飛ばされてしまったら、「交通政策白書」で検索してみてください。本稿執筆時点での最新版は「令和4(2022)年版 交通政策白書」です。

 

 とても長いレポートですが、93ページ(PDFでは105枚目)をご覧ください。

 一番下の左側に、世界の地域別LCCシェアがまとまっています。

 

 LCC大国アメリカと西欧では、既にLCCがかなりのシェアを占めていることがわかります。既存の大手航空会社を代替すると言うよりも、各国航空会社が有名LCCに対抗するため別ブランドで運賃額が低廉な航空会社を設立し、結果的にLCCの占める割合が更に高くなる、という流れに感じられます。

 LCCシェアが突出しているのは東南アジア。これはエアアジア効果ですかね。飛行機に乗るのはお金持ちだけという国々で、まさにEveryone Can Flyの時代になったということでしょう。個人的には、マレーシアを代表する航空会社は最早マレーシア航空ではなく、エアアジアという印象です(あくまでも個人の感想です)。

 

 

 

日本のLCC旅客数

 さて、日本。次ページに国内線と国際線のLCCシェアがまとめられています。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で旅客数が激減しているため参考値として、2019年度まで見てみましょう。

 ごく一部の人しかLCCに乗っていなかった時代を終え、「LCC元年」となった2012年度。国際線のLCCシェアは5.2%だったそう。ジェットスターが早くに就航したオーストラリア路線など、「LCCでないと行けない」ところに旅したい人たちが乗っていて、こんなもんですかね。

 

 それが2018年度には最高値26.1%ですか。6年で5倍。ただし、旅客数の絶対値を見ると8倍以上に増えていますから、シェアを伸ばした以上にLCCを利用する人が増えて、大変大きな存在になっていることが窺われます。

 と、ここまで書いていて思い出しましたが、ぼくがコロナ前最後に行った海外はソウルで、あのときは往復ジンエアーでした。特に韓国路線は飛行時間も短く、充実したサービスを求める必要もない(ついでに、短期旅行が多いから荷物も少ないでしょう)というわけで、LCCに乗るのが当たり前という感じがします。

 

 2020年度でもちろんLCCの旅客数は激減していますが、シェアが下がっていないのは、それだけ定着した証拠。大手航空会社が競合区間から軒並み撤退したから、という可能性も考えましたが、そこまで調査が追いついておらず、また今度。

 でもこれ、LCCは2020年度で相当シェアを落としていると予想していたので意外でした。最初に書いた通り、LCCは多くの旅客を乗せて高頻度で運航することでコストを落とし、安価な運賃を実現しているビジネスモデルなわけです。でも、1便当たりの乗客数や1日の入国者数に制限が設けられ、確実に満席にできない。その需要もない、という状況で、LCCの経営は成り立たないはずなんですよね。てっきりみんな休眠して、LCCシェアは5%くらいに落ちるのではないかと思っていました。

 需給バランスが崩れ、運賃レベルが高止まりしている状況ですから、LCCも相対的に安いとは言え、けっこう高くなっていて、それでなんとか生きているんですよ、という傾向はあるはずです。燃油も高いですし、バンコク行きのLCC航空券を探すと、コロナ前のタイ国際航空と今のタイ・エアアジアの値段が変わらんぞ、みたいな。

 

 

 この環境でもシェアを落とさないLCCは、今後、更に旅客数を増やし、本当に日常的な乗り物になるでしょう。

 そのときに、昔から高めの運賃で売ってきた各国の航空会社が、座席を埋めるために安価な航空券を大量流通させるのか(B747が出てきて団体チケットが出回ったときの再現のように)、あるいは高くても乗ってくれる旅客数に見合った大きさの機材に調整して、しっかり利益を稼ぎ出すようになるのか、経営のバランスが難しくなりそうな気がしています。

 何にせよ、航空運賃の下限は下がっていて、旅行者としては多様な選択肢があるのは助かります。今は全体的に高い運賃が、どうなっていくのか。これから5年か10年くらい経ったとき、「アフターコロナの運賃推移」というテーマで何か書けそうだな、と思っています。

 

 

 今回はLCCについて概説的に見てきました。次回はLCCの運賃構成がどうなっているのか、タリフを参照しながら解説する予定です。

のですが、このコラムのテーマから反れますので、この辺で。

 

 それでは、また次回。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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